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2007年4月20日 (金)

「唐獅子」:「一つの移民物語」

「空と飛ぶ線の動揺」シリーズ7 「一つの移民物語」 

 今年の沖縄は、「世界のうちなーんちゅ大会」等が開催され、夢を持ち海を渡り、そして生きた人々が注目されている。 鹿児島県種子島に沖縄の人々が移住してつくられた部落がある。海に面し小さな入江にある塩屋部落は、糸満の漁夫達が移り住んで大きくなった。はかり知れない恵みを持つ海との対話において、卓越した能力を持つ漁師達は〈海〉に受け入れられる。ぐんぐんと波を切り進みどこまでもいく彼等が、海の幸を人々に与えるために、そして体を休めるために陸ヘあがる。その繰り返しの中で沖縄以外の場所が生活の空間として選ばれていく。
  現在は漁業を営む人もごくわずかで、年々過疎化が進み、沖縄出身で移住してきた人達も高齢化がすすみ数人しか残っていない。 師走というのにほわほわと暖かい日であった。穏やかにお話をなさる97歳と86歳の糸満出身というご夫婦と2、3人曾孫が団欒の最中にお邪魔した。
 古老はサバニで海を歩いていた30代に糸満から移り住み、沖縄出身の奥さんと結婚して子供が生まれ、歳月が流れて孫が生れたという。時間の流れと共に沖縄での習慣が、種子島の習慣へと変化した。仏壇を見せてもらったが位牌も沖縄式の物ではなかった。家の中に祀られている神々も本土風になっている。 彼等にとって〈沖縄〉とは何なのか。「生きている場所に合わせていくのが一番いい。だんだん沖縄の事は忘れてしまった。でも楽しく暮らせたよ。」とお婆さんが笑って答えてくれた。
 けれど、訪れたほとんどが九州出身の学生20人の中で沖縄出身だと言う私の手をこっそり握り「沖縄の人と結婚しなさいね。」と涙声の方言で話し掛けてくれた。お婆さんの皺だらけの手から、文化の異なる地で流れた50年近い時間が私に押し寄せてくる。この一言は、夫婦が生活上忘れなければならなかった〈沖縄〉への思いを伝えるのに十分過ぎるほどで、私の心に強く染み込んだ。
                      1990年9月27日(木)「沖縄タイムス」掲載

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