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2007年4月20日 (金)

「唐獅子」:「月の真昼間」

「空飛ぶ線の動揺」シリーズ9 「月の真昼間」

 月の光りが美しい季節になった。私達の周囲には枚挙に遑がない程、様々な人工の光が氾濫している。このような状態中で生活する私達にとって、月の光は天上から零れ落ちる僅かなものでしかない。どの位の人が、生活空間や自然界に融けこむ月の光りについて、色やその強さを語れるだろうか。
 太陽の光のわずか45万6千分の1の月の光りだけで撮影したという写真集『月光浴』(石川賢治、小学館)が最近出版された。薄闇の中硬質な光に映し出された風景や花は、結構色を保っており、眠りにつかない自然の姿である。
 昔の学生の「満月の夜に本を読んだ」経験談は、強ち誇張されたものではない。今年の豊年祭りで八重山の小浜島を訪れた時に実感した。祭りは満月の夜一晩中を通して行われる。夜が更けるにつれ、そのエネルギーを増し疲れを知らない島人と違って、休憩が必要になった。偶然知合った島在住の絵本作家秋野さんの家で3時間程休ませていただいた。
真夜中の2時頃、歩いて40分程かけて、祭りの行われている部落へ戻った。周囲に人家も無く、満月の光だけを頼りに砂糖黍と牧場の広がる島の道を歩く。
 虫の声と蝙蝠の羽音、眠りを脅かしたのだろう牛が目を醒ましこちらを見ている。祭りの行われている部落からの太鼓・歌声が風に乗って聞こえてくる。月の光は煌々として美しく自然の色彩も浮かび上がらせる。
 秋野さんからいただいた御夫婦の絵本『はまうり』を広げて見た。鮮やかで深い色調の珊瑚礁の海が広がっている。宮古島の浜下りを題材にした話を月の光だけで一気に読み終えてしまったのである。
 恋の成就を願う女性が〈ツキィのマピロウマ(月の真昼間)〉の中で神に祈る光景を歌った八重山民謡の夜が小浜島にはあった。光に溢れた都市の満月夜は、明るい様で暗いのかも知れないとぼんやり思う秋の夜長である。
                        1990年10月25日(木)「沖縄タイムス」掲載

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