うりずんの季節ー水底の白い花
ー2007年5月16日(木) 梅雨入りの日に想うー
暖かい南国にも、季節を表現する美しい言葉があります。海を渡り、島をなでる風が北の方から吹くのか、南の方から吹いてくるのかで、南島の季節は変わり島々の表情は異なります。
沖縄では、旧暦の3月頃の南風が吹き始める季節を「うりずん」と呼んでいます。秋冬の乾季が過ぎ、梅雨の時期と強烈な南国の日差しで満ち溢れる白い夏との間に訪れる短い時間です。その頃、静かに降り続ける雨によって黒土が潤うことを、島の言葉で「ウリー」と表現します。このことから「うりずん」は<降り始め説>と、潤いをたっぷり含んだ自然の豊かさへの<熟れはじめ説>とがあるようです。いずれにしても、豊穣の時の到来に、大地が蘇り、島々の潤いや実りを約束する意味の含まれた言葉です。
その頃に沖縄の山々では、華麗は表情をもったイジュ(伊集:姫椿)の花が、水分をたっぷりと含んだ山肌を白く染め上げます。
あたかも深き緑色の水底に咲きわたる風情の清純なこの花は、沖縄の言葉で綴られる琉歌にも次のように詠まれています。
「伊集の木の花や あんきょらさ 咲きゆりわぬも 伊集のごと 真白咲かな」
(意味)
「伊集の木の花は、あんなに綺麗に咲いて、とても美しい。私もあの伊集の花のように真白に咲いてみたい。」
うりずんの頃には、コンクリートの建物が並ぶ街を離れて、沖縄本島を北へ北へと車を走らせます。その頃の沖縄の海も、群青色に淡白いベールを被せたようなぼんやりとした表情です。こうしたおだやかな季節の沖縄もいいものです。
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