屋嘉比収『<近代沖縄>の知識人 島袋全発』の紹介
昨年秋に『沖縄戦、米軍占領史を学びなおすー記憶をいかに継承するか』の著作を刊行したばかりだというのに、時間をおかずに新刊をまとめた思想・近現代史研究者の屋嘉比収氏には敬服する。
今回の著作は、近代沖縄・沖縄戦・米軍占領下を生きた知識人・島袋全発の生涯に向き合った論考である。東京の吉川弘文館から刊行(3月1日)された。
島袋全発は、沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷に影響を受けた世代で、伊波、真境名安興についで沖縄県立図書館長になった人。近代沖縄、沖縄戦、戦後沖縄のまさに激動の沖縄社会で文化行政、研究を続けた人物。今回の著作は初めての詳細な全発論になる。
現在の政治で沖縄問題がニュースにならない日はない。
島袋全発は、時代をどのように生き、知識人としてその<知性>は何をどのように認識したのか。その世界に触れることで、沖縄の今を生きる私達の在り様も問われている。
「問い立てる沖縄思想史入門 沖縄びとであり続けた<知識人>の生涯」(帯より)は、今人気の坂本龍馬よりも、今日的問題に繋がるのではないだろうか。
<目次>
沖縄学の群像ープロローグ
知識人・全発の誕生
幼少時代から第七高造士館まで
国家感と民族間の相克ー太田朝敷、伊波普猷との認識の相違
京都帝国大学法科学生時代
教育と南島研究の時代
帰郷後の全発の活動
昭和戦前期の郷土研究への沈潜
戦時体制と沖縄方言論争
総動員体制期における言論
戦時体制化、戦場での全発
戦後を生きる全発
沖縄民政府時代
戦後の活動
沖縄近現代史とは何かーエピローグ
*主要参考文献
*略年譜
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