生誕100年記念展「岡本太郎と沖縄」
沖縄県立博物館・美術館で開催されている<生誕100年記念展「岡本太郎と沖縄」>に週末出向いた。
その抜群の知名度と生誕100年記念のメディア特集で取り上げられる機会も多いせいか会場は、多くの観客が来場し作品に向き合っていた。
今回の展覧会は、岡本が始めて沖縄を訪れた1959年前後の芸術活動に焦点を当て、沖縄の写真を中心に、絵画、立体、版画、ドローイングなどの作品で構成されている。民俗学や民族学にも造形深い作家がこだわるこの時期の作品群には<縄文>であったり<沖縄>であったり根源性への強烈な志向がある。
創作されてから半世紀がたつその世界にふれると「わかりやすり枠組み」として立ち上がる。その辺も楽しめる展覧会でもある。
40代後半から50代の決して若い作家ともいえない当時の岡本がとらえた数多くの沖縄(久高、首里、石垣、宮古など)の写真も興味深い。これら多くの作品と向き合う時、従来持っていた自身のとらえ方とは異なる印象に触れることがある。「芸術は爆発だ!」のコピー、対外へのパフォーマンスで「情熱や激しさ」の印象で一般の認知度(イメージといってもいい)が高い作家であるが、以外にも「大変理性的に構図や線を求める」クールな岡本の世界を感じ、作家の印象が大きく変わった。
「自由なおおらかさ」と共に、誤解を恐れなければ<几帳面で混沌・破綻?からほど遠い>理性的な雰囲気を感じてしまうのである。そのような印象に驚きすら覚えた。この印象は写真だけではなく、縄文モチーフの立体作品群にも同様な印象を感じることが出来た。1980年代にはより洗練されたバランスをもつ作品としてあらわれる(縄文的な印象の「踊り」など)。
こうした彼の理性の側面は、根源性へ魅了されるのであろう。沖縄の御嶽に「何もないこと」力を見出し(<眩暈>の表現で)、島や縄文世界に<恋>するのかもしれない。
また岡本と交流のあった沖縄地元作家・大城皓也の当時の作品もいい。
なかなか新鮮な驚きも楽しめた展覧会であった。
開催期間は、2011年6月26日(日)まで。
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