谷川雁「びろう樹の下の死時計」 トカラ列島 臥蛇島
最近1950年代の文章を読むことが増えた。
1959年に書かれた谷川雁の「びろう樹の下の死時計」(『工作者宣言』中央公論社)は、トカラ列島の臥蛇( ガジャ)島を訪れたときの紀行文…民俗誌といってもいい…なかなか味わい深く。1950年代後半から60年代にかけて多くの民俗学者や人類学者が奄美や沖縄にやってきた。
臥蛇島は昭和45(1970)年から無人島。谷川が島を訪れた時期は14戸60人。
谷川雁(民俗学者・谷川健一の弟)も宮本常一の本に触発されてでむいたという。
沖縄研究の民俗・文化研究史には、ほとんど扱われないこの文章を不覚にも初めて読んだ。左翼のカリスマと呼ばれた存在だからか?詩人・評論家の文章の性格上研究史に無視されているのか…。
いずれにしてもとても小さな離島社会を離島ならではの生活の厳しさを、感性豊かな文章で語っている。
トカラ列島、奄美、沖縄研究者には、しがらみを越えて読んでもらいたい文献の一つに違いない。
20年も前の事だ。1989年学生の頃、トカラ列島(平島、悪石島)に出かけた経験がある。小さな田で田植えをしたり、宗教関係の調査をしたり…。その時の経験を後年小文にした(1990年)。
*「赤と緑の夜想曲」
https://aguni-kyoko.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_ccbb.html
*「新しい時間軸」
https://aguni-kyoko.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_5569.html
今回、谷川のこの文章に出会い、久しぶりにトカラの島々の空気感を思い出した。その時の記憶が蘇り、しばらくいろんな事を考えた。
最近では生活臭の薄い民俗関係論文が多くなり…久しぶりに人の暮らしを記録する意味を考えた。
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