南山舎やいま文化大賞」「沖縄タイムス出版文化賞正賞受賞
安本千夏『島の手仕事―八重山染織紀行―』の紹介
粟国恭子(大学非常勤講師・沖縄文化史研究)
沖縄の島々は、染織の文化の豊かな島といわれる。これまで同様なテーマの著作や論文などに目を通して解っていたつもりのその事を、本著の読了後に、改めて、しみじみと感じ入り、その静かに沁み込んでくる言葉の余韻にしばらく浸っていた。
東京都出身の著者は、1998年に西表島に移住し、八重山織物の作り手として本格的に活動している。その暮らしの中で、八重山の島々の染織と関わる人々(個人、団体、施設)を取材し向き合った。西表や石垣島だけでなく竹富島や小浜、与那国、鳩間島の小さき島で布を生み出す人々。その中には戦後開拓で西表に移り住んだ人や著者と同様に八重山に魅了されて移り住んだ県外出身者の人、「島藍農園」を主宰する若物や、島の宝を個人博物館「南嶋民俗資料館」で代々受け継ぐ人、そして島の木材で織機や道具を製作に携わる人たちが紹介されている。
著者は、その人達の人生の語りにある染織のプロの技術・知識と共に、それを支える静かな情熱や内なる誇り・思いを、丁寧に聞き寄り添い記録し、自身のまなざしと心根にきちんと沈めている。その表現は、抑制された言葉で綴られてはいるが、長年「島の手仕事」を支えた人々の語った言葉と、その存在を慕う著者の思いとが共振して、豊かな世界を読み手に届ける。
また、表紙には、著者が織りあげた布の写真が使用され、文中の用語解説、「資料編」(苧麻や糸芭蕉などの糸素材、クールやフクギなど染料植物、八重山式高機など織物用具、島々の織物、制作過程など)、八重山織物の「参考文献」も収録されており、読み手への配慮も丁寧な誌面づくりがなされている。家人の大森一也の撮影した写真は、八重山の自然や、島で地域連携の役割をこなし生活しながら布を着こなす魅力的な人々と、織物文化の美しさを捉え、効果的に使われている。
粟国恭子(大学非常勤講師・沖縄文化史研究)
沖縄の島々は、染織の文化の豊かな島といわれる。これまで同様なテーマの著作や論文などに目を通して解っていたつもりのその事を、本著の読了後に、改めて、しみじみと感じ入り、その静かに沁み込んでくる言葉の余韻にしばらく浸っていた。
東京都出身の著者は、1998年に西表島に移住し、八重山織物の作り手として本格的に活動している。その暮らしの中で、八重山の島々の染織と関わる人々(個人、団体、施設)を取材し向き合った。西表や石垣島だけでなく竹富島や小浜、与那国、鳩間島の小さき島で布を生み出す人々。その中には戦後開拓で西表に移り住んだ人や著者と同様に八重山に魅了されて移り住んだ県外出身者の人、「島藍農園」を主宰する若物や、島の宝を個人博物館「南嶋民俗資料館」で代々受け継ぐ人、そして島の木材で織機や道具を製作に携わる人たちが紹介されている。
著者は、その人達の人生の語りにある染織のプロの技術・知識と共に、それを支える静かな情熱や内なる誇り・思いを、丁寧に聞き寄り添い記録し、自身のまなざしと心根にきちんと沈めている。その表現は、抑制された言葉で綴られてはいるが、長年「島の手仕事」を支えた人々の語った言葉と、その存在を慕う著者の思いとが共振して、豊かな世界を読み手に届ける。
また、表紙には、著者が織りあげた布の写真が使用され、文中の用語解説、「資料編」(苧麻や糸芭蕉などの糸素材、クールやフクギなど染料植物、八重山式高機など織物用具、島々の織物、制作過程など)、八重山織物の「参考文献」も収録されており、読み手への配慮も丁寧な誌面づくりがなされている。家人の大森一也の撮影した写真は、八重山の自然や、島で地域連携の役割をこなし生活しながら布を着こなす魅力的な人々と、織物文化の美しさを捉え、効果的に使われている。
さらに、八重山の地元出版社の質の高い編集力や、誌面のバランス(価格2,800円も含む)の良さも特筆に値する。テーマとする〈織物文化と島の手仕事〉を通して、島の暮らしの美意識をも表現する出版物として資料価値も高く、高質な総合力を持つ著作である。
*『島の手仕事ー八重山染織紀行―』(2015年9月、南山舎:石垣市、A5版、348頁、2800円)
*上記の文章は『沖縄・八重山文化研究会会報』第246号(2016年4月17日発行)に<新刊紹介>で寄稿掲載したものです。
*『島の手仕事ー八重山染織紀行―』(2015年9月、南山舎:石垣市、A5版、348頁、2800円)
*上記の文章は『沖縄・八重山文化研究会会報』第246号(2016年4月17日発行)に<新刊紹介>で寄稿掲載したものです。
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